この世は心が綺麗な人間ほど損をして・・・


心が薄汚い人間ほど得をする・・・








No.2    『Fade』








放課後、立海の男子テニス部レギュラー陣は部室に机を並べて簡単な試験会場を作った。






「じゃあ、これがマネージャー希望者の名簿ね!」
「名簿ね・・・・・って」






幸村が全員に配った名簿にはマネージャー希望者200人の名前から希望理由から顔写真から
すべて記されていてかなり厚みがあった。





「この人数を1日で5人に・・・?」
「嘘だろぃ?」





さすがのレギュラーもこの人数には絶句。




その中「幸村!」っと声を上げたのは朝の練習に出なかった

『柳 蓮二』

いつもノートを片手に相手のデータを記録・・・
そして勝算を立てるレギュラーにとって頼れる存在だ。







「どうしたの柳?」
「実はマネージャーに推薦したい奴がいてな」
「「「推薦?」」」








思わぬ柳の言葉に全員が集まる。
柳は名簿の最後のページにある200人目の女子生徒を指差した。






「こいつだ」
・・・ ?」
「あぁ。こいつをマネージャーに推薦したい」





そこには漆黒色の長い髪に、切れ長な瞳でこちらを見つめる女子の写真があった。


しかし名前と写真だけで後の欄はすべて空白・・・。
全員が驚く中、幸村だけは小さく笑みを浮かべた。







「この子は・・・柳とどんな関係なの?」
「従兄弟だ」
「ふーん。でも残念だけど面接は平等に行うんだ・・・柳の推薦でも特別扱いするわけにはいかないよ」



「そうか・・・まぁ、たぶん会ってみればこいつを選ぶだろう」




幸村ならな・・・っと付け足して柳は面接用にセットした自分の席に座った。





















それからが大変だった・・・
100人が過ぎたところでレギュラーの疲労はピークに。
しかも面接する女子生徒は全員、マネージャーになりたい理由はレギュラー陣とお近付きになりたいとのこと。
つまりはただのファンだった。








「俺もう嫌っスよー!!!」
「そーだよ!あんな奴等マネにしたって役に立たねぇって!!」






赤也とブン太は名簿を机に叩き付け、柳生は逃げ出そうとした仁王を捕まえながら幸村に顔を向けた。







「どうしますか?幸村くん」
「うーん。困ったね、まだ後100人もいるのに・・・・・あっ」
「どうした?」






「赤也とブン太が逃げた」







バッ!!!と全員が目を向けると窓から抜け出して外へ消えていく赤也とブン太がいた。







「赤也!!丸井ぃ!!!!」






真田が怒鳴るときにはすでに2人の姿はなかった。







「自分達だけ逃げやがったなぁ!」
「後で覚えときんしゃい・・・」









「しょうがないなぁ・・・ねぇ柳」
「なんだ?」










「平等って言ったのは取り消すよ。せっかくだから会わせてくれない?
 





 その、 って子に・・・・・」

















コンコンッ・・・っと小さく扉を叩く音が聞こえ幸村が「どうぞ」と声をかけると控え目にその扉は開いた。








「「「「っ・・・!!!!」」」」





入ってきた女子生徒を見て柳以外全員が言葉を失った。






光沢に輝く黒髪・・・それが動くたびにサラサラとなびいて背は女子にしては高く
少し不良っぽい制服の着こなしがよく似合った。


ツンッと吊り上った切れ長の瞳は、なにもかもを見据えているようで髪色と同じく吸い込まれそうなほど深い黒だった。













「・・・あ、じゃあとりあえず座って?」





幸村に言われ、用意されていたイスに座る・・・
彼女はここまで一言も言葉を発していない。




今までの女子ならイスに座った後、レギュラーに向かって意味の無い笑顔を向けたり、無駄に話しかけてきたものだが
彼女は座ってすぐに足を組みレギュラーを睨みつけた。









「はじめに名前を教えて?」
「・・・



「マネージャーを希望した理由は?」
「別にやりたくてきたんじゃない。そこにいる蓮二に言われて仕方なく」



「ふーん。じゃあ男子テニス部にどんな印象を持ってる?」
「印象もなにも今初めて会ったんだから・・・」






はガタッと席を立つと幸村の前に肘をつき顔を近付けた。







「蓮二に何言われたか知らないけど・・・私をマネージャーにしない方がいいよ?」


「・・・・・どうして?」


「私と関わって後悔するのはあんた達だから」


「フーン・・・でも残念ながら僕、君の事気に入っちゃったみたいなんだ。
 部員全員が賛成したら、マネージャー・・・やってもらうよ?」






「・・・あんたの笑顔って嘘だらけね」
「・・・言ってる意味がわからないなぁ?」


「可愛い皮かぶっちゃって・・・その笑顔の裏ってどうなってんの?
 実は、ここにいるあんたの仲間達もあんたの本性なんか見たことなかったり?」







「おいっ!お前いい加減にしないか!!」
「黙ってて!真田!!」
「幸村!!」
「いいから!・・・ごめんね?うちの部員が」






幸村が笑顔を向けてそう言うと、 はチラッと柳に目を向けて「もういい?」っと言うと部室を出て行った・・・。
幸村と柳以外は今だに固まっている。
















「ねぇ柳?彼女何年?」
「3年だ」




「「「3年!!?」」」








固まっていたメンバーが一気に声を上げる。





「同じ学年・・・?初めて見る顔だったけど・・・」
「私もです。あんな方1度見たら忘れないでしょうし・・・」







「知らなくて当然だ」







柳が当たり前のように言った。















「あいつは今まで登校拒否で学校に来なかったんだからな・・・」






















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遅くなりましたNo.2です。
ヒロインさん登場!

この話では赤也とブン太が仲良いです。私が好きなんで・・・。








2006.4.25