どこかで聞いたでしょう・・・この音を。
不気味でしょう・・・この音が。
そう、全てが崩れていくあの日の音。
No.20 『陰り、真実』
「へぇー。
先輩達のクラス屋台出すんスか」
「うん。多数決で決まってね。夏祭りをイメージして賑やかな屋台にする予定」
「えっ!じゃあ浴衣とか着んの!?」
「売り子の人達は着るけど、私や蓮二は裏方だから着ないよ」
「なんじゃ。つまらんのぉー」
ハァ。と大袈裟に溜め息をついてみせる仁王に、
はクスッと笑みを浮かべた。
「私、文化祭なんて初めてだから楽しみだなぁ」
「えっ?
先輩、文化祭に参加したことな・・・」
パンッ!とブン太が赤也の頭を叩く。
その瞬間、赤也は「しまった」と口を押さえた。
は中学に入ってすぐに登校拒否をした過去がある。
テニス部メンバーとの出会いにより、暗い過去から立ち直ったのだ。
イベント事の楽しい想い出など・・・あるわけがない。
「いいんだよ。赤也」
しかし、
はそんな暗い空気を消し飛ばすかのように柔らかく笑った。
「もう、みんながいるから。楽しみで仕方ないくらいだよ?」
その笑顔に安心したのか、フッと全員が笑顔になった。
「なら、初めての文化祭・・・俺が一緒に回ってやってもよかよ?」
スルッと肩に手を回しながら笑みを浮かべる仁王。
はベーッと赤い舌を出しながら、その手を払い落とした。
「お断りしますー。仁王と回ったらどこ連れて行かれるか分かんないもん」
「おー。よく分かっとるのぉ」
「柳センパーイ!!今のレッドカードでしょ!!」
「仁王!
から離れろぃ!お前退場!!」
毎回こんな感じで騒がしくなる昼の休み時間。
は明るい笑顔で楽しそうに笑っていた。
文化祭がだんだんと近づくにつれ、どのクラスでも出し物の準備をしている光景が目立つようになってきた。
ある日、校舎裏にあるゴミ捨て場に赤也は不満げな顔をしながら立っていた。
「おっ?赤也じゃなか?」
「仁王先輩!チーッス」
振り返って元気よく挨拶する赤也の足元には大きなゴミ袋が2つ。
仁王は首を傾げながら尋ねた。
「なんじゃ。雑用か?」
「そうなんスよ!何も手伝わないでいたらゴミ出して来い!って言われて・・・」
「自業自得じゃよ。準備っちゅうのはクラス全員でやらんと意味を為さん」
「へぇー。仁王先輩にしちゃ真面目な答えが・・・。そういう仁王先輩は何してたんスか?」
「ん?サボり」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
眠そうに欠伸をする仁王に赤也は静かに言葉をかけた。
「仁王・・・先輩」
「んー?なんじゃ?」
「ずっと、聞きたかった事があるんスけど」
ザワザワザワッと風で木々が音を立てる。
赤也の真剣な表情に仁王は何かを感じ取り、ゆっくり向き合った。
「なんじゃい。言うてみぃ?」
「仁王先輩、覚えてるっスかね?中学んとき・・・
先輩がテニス部ファンとかいう奴らに呼び出された時のこと」
「あぁ・・・。なんとなく、な」
「じゃあ、これは覚えてるっスか?
先輩を探してた俺に仁王先輩が『屋上へ行ってみろ』って言ったこと」
「あぁ。確かに言うたな。それがなんじゃい?」
「あの時、何で
先輩が屋上にいるって知ってたんスか?」
その言葉に、仁王の瞳が鋭く変わった。
「だっておかしいじゃないっスか!何で
先輩の居場所が分かったんスか!?
見てたんだったら仁王先輩が助けに行ってたはずでしょ?なのに仁王先輩は俺が最初に
『
先輩を見なかったか』って聞いた時は知らないような態度でしたよね!?」
「赤也・・・」
「それに俺は、あの時一言も『
先輩がファン連中に呼び出された』なんて言ってなかったんスよ!?
それなのに、何であんなに的確に
先輩の居場所を言い当てたんスか!!」
赤也の目も徐々に鋭いものに変わっていく・・・。
両者の間には険悪な雰囲気が渦巻いていた。
「仁王先輩・・・本当はあの時!!」
「あぁ。知っとった」
仁王の言葉に赤也は目を見開いた。
「
が嫌がらせ受けとったんも・・・影で何されとったのかも・・・全部知っとって黙ってた」
「なっ・・・!?」
「じゃけん、赤也」
クルッ。と仁王は赤也に背を向けた。
風が、仁王と赤也の髪を優しく揺らした。
「また
が同じ目に合っちょったら・・・今度は助ける。もぅ・・・あいつの、あんな顔は見とうない」
それから1度も振り返らずに仁王は赤也の前から去って行った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こういうところで前作(FadeT)とリンクさせよう
とはするんですけど・・・。
前作書いてるときはまさかUを書く事になろうとは予想もして
なかったので、リンクのさせ方が無理があったり話がズレていたるするかも
しれません。でも無視して!!(他人任せ!!?)
2010.8.1