ねぇ、知ってる?


貴方達がどれだけ私を救ってくれたか・・・。


貴方達がどれだけ私の支えになってくれたか・・・。













No.19    『交差とズレ』













「お化け屋敷で蓮二が幽霊役」
「却下」

「喫茶店で女子が男装、男子が女装。蓮二は女物の着物を」
「却下」

「メイド&執事喫茶で蓮二が・・・」

「いい加減にしろ」










コツンッと蓮二の拳が の額を軽く叩いた。










「真面目に考えろ。文化祭でうちのクラスは何を出展するのか・・・もう時間がないんだぞ」
「考えてるよー。だから私が個人的に見てみたい蓮二のコスプレを・・・」

「真面目に考える気ないだろ。お前」










うーん。と唸りながら机に突っ伏す を見て、蓮二は仕方なそうに溜め息をついた。










「そういえば・・・他のクラスと被らないように
 出し物考えなくちゃいけないんだよね?他のクラスはどんな案が出て・・・」

「他のクラスもまだほとんど決まっていないようだ。
 しかし、丸井のクラスは飲食系・・・弦一郎のクラスはお化け屋敷になるだろうな」

「何でそんな情報を・・・って、聞くだけ無駄か」
「フッ」










カリカリカリッとペンを走らせる
窓の隙間から吹き込んできた風に髪を揺らされ、おもむろに外へ目を向けた。










「ねぇ・・・蓮二」
「なんだ?」










空がオレンジ色に染まる。
はうっとりとその美しさに見とれていた。










「変な事、聞いてもいい?」
「お前が変な事を言い出すなんて、いつもの事だろ?」
「うわっ。そういう言い方する!?」










蓮二は「冗談だ」と笑いながら再び を見つめ直した。










「お前がそんな顔をする時は、何か心配をしている時だ。真面目に聞く」
「えっ?そ、そう。あの・・・さ」
「あぁ」



「私は・・・いつまで皆のそばにいていいんだろう?」



「・・・なに?」










眉にシワを寄せながら聞き返すと、 は首を横に振った。










「ごめん。やっぱり何でもな・・・」










ガタンッ!という音と共に は驚いて言葉を失った。
蓮二は の肩をグッとつかみ、顔は眉にシワを寄せたまま睨み付けている。










「蓮・・・?」
「また、いなくなる気か」
「えっ?」
「俺達の前から・・・」
「ち、違う!そんなつもりない!!ただ・・・!!」










1度口を固く結ぶと、今度は小さく開いて弱々しく言葉を繋いだ。










「みんなが・・・優し過ぎるから」










蓮二は目を見開いた。















あぁ、そうか・・・。今、気付いた。

・・・こいつは不安なんだ。

俺達が無理して一緒にいるんじゃないか・・・心配して自分を気にかけているんじゃないか。

人の優しさに触れたことがないから・・・。

「甘え方」を知らない。

「愛される」ということを知らない。

自分を責め続けた傷が、人の優しさを無意識に拒む。















「周りがお前に優しいのは、お前が周りに優しいからだ」
「えっ・・・?」

「人を愛せない者は、人に愛されない。聞くが・・・
 お前は俺達のことが好きで、ずっと一緒にいたいと思うか?」










蓮二の質問に は小さく頷いた。










「当たり前だよ。私は皆が好きだよ?ずっと・・・一緒にいられたらって、思ってる」
「じゃあ俺達も同じだ」










そっと片手を の頬に添えると、蓮二は柔らかく笑った。















「お前が好きだ」
















それぞれの想い。

交差する意識。

すれ違う気持ち。

全員の心の奥。

深い深い、自分でも気付かない小さな歯車が。

怪しい音を立てて狂い出した。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

柳は1番言いたい放題言うくせに

1番自分の気持ちにフタをしていると思う。

しかも無意識、無自覚に。

口から出るのも咄嗟の「ウソ」

あ、やべ。切なくなってきた・・・(お前が?)







2010.3.2