初めて弱さを見せた君・・・。


戦う理由を見つけろと言った君・・・。


あの時の貴方は眩しかった。













No.17    『自覚と需要』













「最悪・・・」
「それはこっちのセリフよ」










ボソッと毒づく赤也の言葉に、 はすかさずツッコミを入れた。





今、図書室には英語の教科書とにらめっこする赤也に、向かい合う席で雑誌を読む がいた。
「う〜・・・」という赤也のうめき声が悲しく響く。










「なんで俺、大会前に英語の課題なんかやってんだ・・・」
「自業自得でしょ。テストで5点なんて取って・・・課題出されても文句言えないよ」
センパーイ。代わりにこれやっといてよ。 先輩なら楽勝っしょ?」

「ダーメ。私が幸村から頼まれた事は「赤也に勉強を教えること」です。
 分からない所があるなら教えるから聞いて?」

「じゃあ・・・全部」










他にもたくさんの生徒が図書室を利用するために訪れていたが、なにせ立海の大きさといったらない。
他の生徒の声が届かないくらい奥の机を選んだ赤也と を邪魔する者は1人もいなかった。










「違う違う。これは過去形だよ・・・つまり?」
「あっ・・・。こう?」
「そうそうそう」










元々、集中力はある赤也。
基礎さえ理解すれば自らサラサラとシャーペンを走らせるようになった。










「よし!少し休憩しよっか?」
「へーい」










赤也がクタクタになりながら机に突っ伏すと、雑誌を閉じた はクスッと笑みを浮かべた。










「なんスかー?」
「ううん。赤也は全然変わらないなー、って思って」
「はっ?」
「もちろん大人っぽくなったけど内面がね。中学生のときのままだなー、って」
「それ・・・嬉しくないっス」
「アハハッ!そっか、ごめんごめん」










ムスッと唇を尖らせる赤也。
それを見て、 はますます笑みが零れた。










「変な意味じゃないんだよ?」

「本当っスかぁ?どーせ生意気で単純で、英語がまるっきりダメ!
 なところは変わらないなぁ・・・って言いたいんでしょ?」

「んー。それもあるけど・・・」










あるのかよ!!赤也はガクッと首をうなだれて落ち込んだように を軽く睨み付けた。










「でも・・・そうじゃないんだ」



「えっ?」










顔を上げる赤也。
はフッと窓の外に目を向けると、静かに目を閉じた。










「赤也の・・・強くて、明るくて、真っ直ぐなとこ。ハッキリした意見に、コロコロ変わる表情
 人を元気付けようとする心遣い。全部あの時のままで・・・私、凄く安心したんだ」










いつの間にか太陽は傾き、 の肌や瞳、髪や制服は美しいオレンジ色に染まった。















ドキンッ・・・!!















自分でも気付かないくらい、赤也の心臓が小さく跳ねた。










「信じてもらえないかもしれないけど・・・両親に会いに行ってる間中、ずっとみんなのこと
 考えてた。今何してるかな?みんな変わっちゃったかな?って・・・ちょっと不安だったの」










その瞬間、赤也はハッ!と気付いた。










俺は・・・ 先輩がいなくなったことで自分だけが、不幸で、不安で、怖いんだと思ってた。

けど・・・ 先輩の方がずっと不安で、怖かったんだ。










「でも戻ってきたら、みんな約束通り私の居場所を空けといてくれてた。
 本当に嬉しかったんだ・・・ありがとうね。赤也」










赤也に顔を向けながらニッコリと微笑む姿に、今度は自分で聞こえるくらい心臓が大きく音を立てた。















ドキッ!!





(うわっ・・・!!)















赤也の顔の熱は一気に上がった。










「どーいたしまして」










教科書を立てて極力顔を隠しながら、今が夕方で本当に良かったと思った。















ヤバイ・・・。

もしかして俺・・・

自分でも気付かないうちに、自分の自覚以上に 先輩のこと・・・。















「赤也?」

「あ!いや、なんでもないっス!!」















あの夏の合宿で、俺は確かに 先輩に告白した。

でもあれは何年も前の話だし・・・今度はもっとハッキリ、もう1度告白の必要がある。

俺は今でも本気で・・・





先輩が好きだ。















先輩!」
「ん?」

「あの・・・最近忙しそうだし、もしかしてここら辺にどんな店があるか・・・
 あんまり知らないんじゃないっスか?」

「へっ?」










は机を見つめながらしばらく考えると「うん!」と顔を上げた。










「食事の買い物に行くくらいで、遠出はしたことないなぁ」
「じゃあ案内しますよ!大会明けの休みの日!!」
「えっ、いいの?」
「もちろんっスよ!あ、でも!他の先輩達には内緒ですからね」
「・・・なんで?」
「なんでもっスよ!!」










赤也は本当に嬉しそうに笑うと、教科書と課題を鞄に詰め込み席を立った。










「約束っスよ!絶っ対に行きましょうね!!」
「えっ、ちょっ!赤也!課題は!?」
「こんなん帰ってから家でやりますって!デート、楽しみにしててくださいね!!」










ここが図書室だということも忘れているのか・・・。
赤也はバタバタと騒がしく部活へ向かって行った。















「まったくもう・・・。ん?はぁ!?デ、デート!!?










そして もまた・・・気付くのが遅すぎたのだった。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

自分の気持ちを再確認した赤也くん!!

さて・・・面倒なことになってきましたねぇ?(楽しそうだな)

それぞれの気持ち、どこへ向かうのでしょうか?

それは俺でも、まだ分かりません。

ペンが進むままに・・・ストーリーも進みます。





2009.10.26