天涯孤独だと思い込んでいた君・・・。


皆がいるから頑張れると言った君・・・。


貴方の優しさが私を救ったの。













No.14    『感情と言葉』













「あれ。仁王?」
「お、おー。
「めずらしー。何で仁王が図書室なんか・・・に・・・んー?」
「なんじゃい。ニヤニヤして」

「なかなか似合ってるじゃない?柳生くん♪」
「・・・冗談は止めて下さい」










昼休みの図書室には正直、人なんていない。
放課後ともなれば話は別だが、昼休みの短い時間など友達とのおしゃべりタイムでしかないのだ。
そんな時間に本を読もうと思う奴は少ない。

今だってそうだ。
と・・・仁王の姿をした柳生以外、ほとんど生徒の姿なんて無かった。










「ハハッ・・・!!おっかしー。柳生がこんな事するなんて!!」
「わ、私だって好きでやっているのではありません!!仁王君が次の試合で試すからと・・・」
「言われて仕方なく変装?これじゃ、紳士の名折れだねー」










肩を揺らして笑う に柳生は大きく溜め息をついた。










さんにだけは見られたくなかった・・・」
「ん?なーに、柳生?」
「いえ・・・もう昼休みも終わりますし、変装も終了です」
「えー?」
「何ですか「えー?」って・・・」
「いや、今日1日くらい。そのままでも」
「ダメです」










仁王型のウィッグを外すと はすぐに「あっ」と柳生の頭を見て呟いた。










「柳生。髪の毛が乱れてるよ」
「えっ?あっ・・・」
「座って?」










はそばにあった椅子に柳生を座らせると、制服のポケットからクシを取り出した。










「えっ?ちょっ・・・ さん。結構ですから!」
「ダーメ。こんなボサボサな髪してたら紳士じゃなくなっちゃうよ」










手際よく柳生の髪をすいていく










「柳生はいつでも乱れ1つないテニス部の見本なんだから。あっ!そういえば眼鏡どうしたの」










ヒョコッと顔を覗き込むと と柳生の顔が一気に近くなった。










「仁王君に取られました・・・」
「なるほど。仁王は今柳生に変装してるわけだ」
「えぇ。あの・・・何ですか、さっきからじぃーっと」
「別に?眼鏡1つで印象って変わるもんだなぁー。っと思ってただけ」










柳生の前で腰を屈めると、 は指先で髪全体の形を整え始めた。










さん・・・」
「ん?」










柳生は が髪に触れる度、次第に目を閉じていった。










「貴方にとって・・・テニス部とは、どんな存在ですか」
「えっ?どんなって・・・」
「大切ですか?」










スッ・・・と再び目を開く柳生。
眼鏡をかけていない彼の瞳は深く・・・ は思わず1歩引き下がった。










「もちろん・・・大切だよ。みんながいなきゃ、今の私はなかった」










はゆっくり目を細め・・・まるで過去の記憶を覗くかのように俯いた。










「みんなと出会ってなかったら・・・今頃私は」










ガタンッ!!





「っ!!?」










突然立ち上がった柳生は の肩をつかむと、側にあった本棚に押し付けた。
柳生と本棚に挟まれた は驚きを隠せずに目を見開いた。










「や、ぎゅ・・・?」

「やめてください」










肩を掴んでいた手を頬に移し優しく撫でる・・・。
その時の柳生は・・・苦しそうに眉を寄せて、今までの冷静さからは掛け離れた表情だった。










「まだ貴方は・・・そんな孤独な顔をするのですね」
「柳生・・・?」
「まだ過去に、苦しんでいるのですか?」










その言葉に は静かに首を振り、そっと柳生の手に自分の手を重ねた。










「柳生・・・違うの。私が笑うのも、泣くのも、すべて何にも捕われてない・・・私の感情だよ」










はフッと優しく笑みを浮かべて見せた。










「わかる?今まで苦しくても辛くても、泣き方が分からずに無理に笑っていた私が・・・
 感情をストレートに伝えることが出来るようになったの」

「それなら・・・なぜ」
「孤独を感じたから、あんな顔をしたんじゃない。ただ・・・想像したら少し怖かっただけ」
「怖かった?」

「そう。もし、みんなと出会っていなかったら・・・あの夏を過ごしていなかったら・・・
 きっと私は今ここにいない。そして、まだ1人だったかもしれない」

さん・・・。それならば、約束してください」










柳生は頬にあった手を後頭部に回し、 の体を抱き寄せた。
表情が見えなくなった柳生の声が、直接耳に語りかける。










「どこにも行かないで下さい。側に・・・いて下さい」










押し殺すような弱い声・・・。
柳生がこんなにも自分の感情のまま言葉をぶつけた事は初めてだった。










そうか・・・。今更気付いた。
柳生はどこか私に「似てる」んだ・・・。

感情の上に別の顔を貼り付けて人に気付かせないようにする「癖」のようなもの。
柳生も感じてるんだ・・・同じ「不安」を。










「1人になった時は私を呼んで下さい。絶対に・・・駆け付けますから」

「・・・ありがとう・・・柳生」










素直に嬉しかった。
柳生は気付いてたんだね・・・。私が・・・たまに1人になることを。
何かを考えたくなると1人で静かな場所へ消える私を・・・柳生はずっと心配してくれてたんだね。










「・・・ありがとう・・・」















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

やーぎゅー。(なに)

とりあえず今回やらせたかったのは入れ替わり。

それだけ(オイッ)

柳生は感情を表に出さなそうですよね。

泣きたくても笑う・・・みたいな。

やぁああぎゅぅううー!!!(やめろ)








2009.7.4