笑った顔が嘘つきだと言った君・・・。


1人は寂しいと言った君・・・。


どちらも貴方の優しさなんだよ。













No.12    『忠告と警告』













「あっ、柳」
「幸村?どこに行くんだ」
「資料室だよ。文化祭の出し物を決めるから参考にね」
「奇遇だな。うちのクラスも今日はその話し合いだ。資料は に頼んだんだが・・・」
「・・・帰って来ないの?」

「あぁ。まさか学校内で迷われるとは思わなかった















「資料室・・・資料室・・・っと?」










廊下の突き当たりにある教室のプレートには「物理室」の文字が。
しまった・・・これは・・・。










「完璧に迷ってしまった・・・」










一応、蓮二が言った通りの道順で歩いて来たつもりなのだが・・・。
一体どこなんだ・・・ここは。










「あーもー。誰か助けてぇ・・・」










誰もいない、薄暗い廊下で呟くと妙に自分の声が反響して聞こえてきた。










「・・・・・・・・・・・・・・・。」















久し・・・ぶりだなぁ。「寂しい」なんて感情は。
昔の私の心は、今のこの廊下のようだったな。

薄暗くて・・・冷たくて・・・自分1人しかいない。

それが当たり前になっていた私の空間。

でも・・・あいつらはそこにズカズカと入り込んできて、私を1人の空間から引きずり出してくれた。

忘れてたんだ・・・「寂しい」って何なのか・・・。















「見っけ」










静かに響く落ち着いた声に振り返ると、優しい笑顔を浮かべながら彼はそこにいた。










「幸村・・・」

「何やってるの は・・・資料室に行きたいんでしょ?ここじゃなくて、この隣の廊下だよ」
「えっ。嘘」
「フフッ・・・仕方ないなぁ。行こう?」










どんなに暗くて冷たくても、怯まず力強く自分に存在感を与える幸村。
たまに・・・その存在の大きさに怖くなることがある。










「なんだか思い出すね」
「なにを?」










廊下を進みながら幸村は懐かしむような口調で言った。










と初めて話した日。あの時 は僕に「なぜ人は嘘をつくと思う?」って聞いてきたよね」
「よく・・・覚えてるね。今思うとかなり恥ずかしいよ」
「とか言って。 だって覚えてるんでしょ?あの時の風とか・・・あの時の冷たさとか・・・」

「覚えてない」
「覚えてるくせに」
「覚えてないって」
「本当に覚えてないの?」
「すみません。覚えてます」










幸村は嬉しそうにニッコリ笑ったけれど・・・私は恥ずかしくなって俯いた。










「ここだよ。資料室」










幸村の言葉に顔を上げると、目の前の教室には確かに「資料室」というプレートが掲げられていた。










「さ。早く資料を探しちゃお」
「うん」










私が資料室に入ってから幸村が入る。
その資料の多さに呆然としていると後ろからガチャン!という音がした。










「・・・幸村」
「ん?」
「鍵・・・閉めた?」
「うん」
「なんで?」










幸村はニコニコッ笑みを浮かべながら1歩1歩近づいてくる。
その威圧感に私も思わず後ずさると最後はトンッ・・・と壁に背を付けた。










「幸っ・・・?」

「ねぇ。










幸村はその長く白い指でスッ・・・と私の顎を捕らえると、なぜか切ないげに目を細めた。










「人は・・・なぜ嘘をつくと思う?」

「えっ・・・?」










それは・・・あの日私が幸村にした・・・。










「自分の居場所を守るため?確かにそれもある・・・でもね、 。嘘は人を守るためにつく事もあるんだよ」

「人を・・・守るため?」

「そう・・・大切な人を守るためにつく・・・優しくて、残酷な嘘」










幸村は指を離すと滑らせるように私の頬を包み込んだ。










「いい加減・・・気付いてあげなきゃダメだよ。このままじゃ、 は大切なモノを失うかもしれない」

「私の・・・大切なモノ?」

「そう。近すぎて見えない・・・大切なモノ」










それは何かと聞こうと、口を開いた瞬間。
今2人が入ってきた扉のドアノブが急に音を立てて暴れだした。
おまけに、鍵がかかっていて開かないと分かると今度は乱暴に叩く音が部屋中に響いた。










ガチャガチャ!!

ドンドンドンッ!!





「な、なに!?」

「到着したみたいだね。 の救世主」
「きゅ、救世主!?」










幸村が鍵をかけたせいで、ちょっとやそっとじゃ開かない扉を力付くで開けようとする人物・・・。
驚いてオロオロしている私を残して幸村は扉に近付いた。










「なーに、柳?」
「幸村・・・!!」
「今いいとこなんだ。邪魔しないでくれる?」
はどうした!!」
「いるよ?僕と一緒に・・・」










バンッ!!










強く叩かれた扉に幸村はニヤッと口角を上げると、素早く鍵と扉を開けた。










ガチャッ!!



「なっ!?」










突然開いた扉の向こうから崩れるように姿を現したのは、額に汗を浮かべた蓮二だった。
蓮二は完璧に倒れ込む前に体勢を立て直すと、私を見て次に幸村を睨んだ。










「幸村・・・!!」
「大丈夫だよ、柳。僕は何もしてない」
「あのメールは・・・」
「柳を焦らせるための作戦かな?グズグズしてたら・・・今度こそ取られるかもね。って警告」










幸村は柳の肩を軽く叩くと資料室を出て行った。










「幸村!資料は!?」
「また明日にするよ。それより ?」
「えっ?」



「大切なモノ・・・早く気付いてあげてね」















取り残された私と蓮二。
視線を交えると蓮二は大袈裟に溜め息をついて見せた。










「どうしたの蓮二。何でここに?」
「幸村が・・・メールで」
「メールで?」
「いや。無事ならいい」
「?」










ジト・・・ッとキツイ目付きで睨む蓮二に、私は一瞬ビビッて体を縮めた。










「な、なに?蓮二」
「あまり・・・」
「えっ?」



「あまり心配をかけさせるな」










気付いたら蓮二にギュッと抱きしめられていた。

幸村の言った言葉の意味も気になるが・・・今はただ、蓮二のぬくもりが心地よかった・・・。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あれ・・・?

幸村の話だったはずなのに後半から

なぜか柳メインに。

ご、ごめん!幸村!!いや、本当にゴメン!!

不可抗力だ!!(んなわけあるか)







2009.3.22