お互い傍にいて当たり前だと思ってた・・・。


お互いが大切だと想い合ってた・・・。


それは貴方とだから出来たこと。













No.11    『貴方の気持ち』













ここ、立海は勉学・スポーツと共に学校行事などにも非常に力を入れるらしく。
近々行われる文化祭の準備をする生徒達もかなり活気に溢れていた。










「えっ!? 先輩、運営委員なんスか!?」
「うん。蓮二に無理矢理・・・あぁー。テニススクールに行く時間が減るー」

(あぁ。なるほどねぃ)
(ナイス。柳先輩)





「フフッ・・・」









微かに笑う声が聞こえ、そちらに顔を向けるとおかしそうに肩を揺らす幸村がいた。










「笑い事じゃないよ幸村」
「フッ・・・ごめんね。でも ?柳の気持ちにも気付いてあげなよ」
「蓮二の気持ち?」










つまりは・・・なぜ蓮二が運営委員に立候補してまで私の時間を奪ったのか。
その理由を考えろという意味だろうか?










「えっと・・・」
「なぜ柳は一緒に運営委員に立候補したと思う?」
「一緒に・・・いるため?」

「そう。 が1人でテニススクールに通うことが心配なんだよ。
 だから少しの時間でも傍にいたいんじゃない?」

「あっ・・・」










だから蓮二。またマネージャーにならないかって誘ってくれたんだ・・・。










「でも、それなら学校でいつも顔合わせるし。家だってそんなに遠くないし」
「不安なんじゃないかな」
「不安?」
「そう。 がまた遠くに行って帰ってこないんじゃないかって・・・不安」



「えっ?」



「知らないよね。 がいなくなって連絡も何もない・・・。柳は普段通りに
 振る舞っていたつもりかもしれないけど、本当はずっと のこと心配してるって
 みんな気付いていたよ。 の帰りをきっと誰よりも待ってたのは・・・柳だよ」










幸村は優しげな目で私を見ながら言った。
でもその言葉は私に向けたものじゃなくて・・・蓮二に向けて言った言葉のようにも聞こえた。










「幸村。それ以上余計な事を言うな」

「れ、蓮二!?」










いつの間にか後ろに立っていた蓮二に、幸村はニコッと笑みを向けるだけだった。










「余計な事?柳の気持ちを代弁しただけなんだけど?」
「俺がいつそんな事を頼んだ」
「あー。内容を否定しないってことは、僕の読みは当たりかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」










蓮二が動揺を見せたことなんて今までになかった。
でも確かに蓮二は幸村の言葉に怯んだのか、一瞬顔を歪ませた。










「素直じゃないな・・・。どっちも」

「「どっちも?」」










私達2人の声が綺麗に重なる。
思わず同時にお互いと視線を交えると、気まずくなり俯いてしまった。










「1番近い存在の心理って・・・案外わからないものだよね」










その言葉を・・・私達はただ黙って聞いていた。















部活が始まり、幸村達はみんなテニスコートで必死にボールを追いかける。
私はその様子を遠くからジッ・・・と見つめていた。















1番近い存在・・・。

そうだ・・・蓮二はいつでも私の1番そばにいてくれた。
私が悩んだり苦しんでいることに1番最初に気付いてくれた。

私が最も頼ってしまう存在・・・。

なのに・・・なのに私は、蓮二の気持ちなんて・・・考えてなかった。
そばに居てくれることが当たり前だと、いつの間にか思ってた。
相手が私を想って、助けてくれた分・・・私は、その人を想って、助けてあげたい。















カシャンッ!!










気付いたら私はテニスコートを囲むフェンスに駆け寄り、必死に蓮二の姿を探した。










「蓮二・・・」










絶対に聞こえないほどの小さな声で蓮二を呼ぶ。



すると・・・偶然か。
まるで声が届いたようなタイミングで蓮二は振り返ると、私に気付きこちらに駆け寄ってきた。










。どうした?もう暗くなるぞ」
「うん。あ、あのね・・・今日はスクールないの。だから・・・」
「ん?」





「ま、待っててもいい・・・?」










蓮二はフェンス越しに私と手を重ねると「あぁ・・・」っと言って、笑った。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

幸村はこういうとこ鋭そうだなぁ

っと思いませんか?

蓮二はデータを取る面では他人の気持ちに

鋭いくせに、自分の事には鈍ければいい(願望)







2009.3.2