「1人が怖いの?」


そう聞かれた記憶が今も新しい・・・。


でも、誰に聞かれたのか思い出せないのは・・・なぜ?













No.9    『決意の真相』













「いや。それにしても裕太くんに彼女がいただなんて知りませんでした」
「だ、だから違いますってば!!」
「私が道に迷っていたのを助けてくれたんです」










「そうでしたか」っと言って観月は指で髪を絡めた。










「よくやりました。裕太くん」
「えっ?」
「これで立海大の情報源が広がりました・・・早速 さんには色々教えていただきましょう」
「ちょっ!観月さん!?」










早速。っと言った様子で観月は私の手を取ると上品な笑みを浮かべた。










さん・・・お1人ではテニスを楽しめないでしょう。いかがです?僕達とご一緒しませんか」

「いいんですか!」

「もちろん」










観月はそれだけいうと「ついて来て下さい」っと言う風に先を歩き出した。
私と裕太でその後ろをついていく。










「ところで さん」
「はい?」
「立海大と言っていましたね?男女ともテニスの強豪校・・・」
「そう言われてますね」
「なぜあなたは部活へ入らずに、わざわざこのスクールへ?」










その質問に私は少し戸惑った。










「えっと・・・」
「なにか深い事情が?」
「あ、そうじゃないんです。ただ・・・変わりたくて」
「変わる?」










その答えには観月と裕太が同時に首を傾げた。










「私、今までいろんな人達に助けられてきたんです。
 今の私がいるのも、またテニスを始めようって思えるようになったのも・・・
 その人達のおかげなんです。ずっと頼りっぱなしだったから、もう甘えてばかりいないで
 今度は自分で決めて行動しなきゃ。自分で自分を変えなきゃ。って・・・思ったんです」










少しの沈黙が訪れると、私はハッとして手をパタパタと振った。










「あ、だから少し遠いこのスクールに!すみません暗くなっちゃって!そんな深い意味はないんです!!」

「んふっ。いえ、素晴らしいじゃありませんか」
「へっ?」










観月はまたクルッと髪をいじるとニッと口角を上げた。










さんの判断は正しいですよ。チームワークとか言って
 ただの馴れ合いに参加するより・・・個人の力を伸ばした方がいい。同感しますよ」

「えっ、いや。そう言ったつもりは・・・」
「どうでしょう さん。うちに来ませんか?」

「はっ?」

「はぁ!?」










その言葉には私より裕太の方が驚いていた。










「ちょっと何言い出すんですか観月さん!?」
「いいじゃありませんか。僕なら さんの力を存分に引き出してさしあげますよ」
「立海大の情報を聞き出すのが狙いでしょ!?」

「立海大の情報?」










裕太はしばらく間を開けると、しまった!っという風に口を手で押さえた。










「なるほどねー。それが狙いですか・・・観月さん?」
「おやおや・・・。おしゃべりですね裕太くん」
「・・・すみません」
「しかし、 さんをルドルフに・・・という話は本気ですよ?」










えっ?という間抜けな声が裕太と重なった。










「実は・・・あなたの事は前々から知っていたんですよ。 選手?」
「あっ、もしかして・・・。雑誌か何かを?」

「えぇ。見覚えがあると思ったんです・・・。最近、海外のテニストーナメントで
 優勝をさらったまま帰国した無名の日本人選手がいるとテニス雑誌にね」

「えっ。ほ、本当ですか!観月さん!?」
「ですから、この僕が直々に声をかけたということです」










裕太が凄く驚いた様子で振り返るので、私はヘラッと笑って見せた。










「いかがです?悪い話ではないと思うのですが。僕の所へ来れば
 さらにあなたのデータを調べあげ、最高の環境でテニスが出来ることを保証しましょう」

「さらに立海大の情報も聞き出せる・・・ですか?」
「えぇ」

「とても魅力的なお誘いですけど・・・」










がクスッ。と魅惑な笑みを浮かべると、それを見た裕太の顔が一気に赤くなった。










「残念ながら、観月さん以上のデータを持ってる奴がいるんです。
 私は・・・そいつにしか情報を売る気はありません」










キッパリと言い切った に目を丸くしながらも、観月は満足そうに笑った。










「気に入りました」















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

観月の誘惑に勝つ!(違う)

えー。皆さんわかりますよね?

柳以外にデータを売る気はないんです!

って、1度も売ってないんですけど(オイッ)








2009.1.10