過去には戻れない。

だから後悔をする。

過去は2度とない。

だから思い出がある。













No.6    『宣戦布告』













「相変わらず・・・。あいつらのパワーってどこから出てくるんだか」

「同感」










日暮れが速くなったこの季節。夜の6時ともなれば辺りは真っ暗だ。
そんな中、誰もいない公園の広場で私達9人は季節外れの花火大会を始めていた。










「次ー!この打ち上げやりましょーよ!!」

「連発の方が面白れぇだろぃ!!」










1番はしゃいでいるのはあの2人だろう。
私は煙りがこない方へ逃げて、みんなが花火を楽しむ様子を眺めていた。










「つまらん顔しちょるのー」

「仁王。そんなことないよ楽しいよ!ってかあの花火・・・」

「あぁ。夏休みに赤也とブン太が買うたやつじゃよ。真田に没収された・・・」

「あ。なるほど・・・」

「じゃけん今日は が主役ぜよ。ホレッ、お前さんの分」

「あ、ありがとう!」










仁王から線香花火を受け取るとその場に座り込み、ライターで2人同時に火をつけた。





パチッパチッパチッ・・・!!










「やっぱ花火と言ったら線香花火だよね」

「プリッ」

「仁王も線香花火好き?」

「ピヨッ」










それは肯定なのか否定なのかまったく分からなかったが・・・。
弾ける花火を真剣に見つめている辺り、仁王は線香花火が好きなんだと思う。










「のぅ。

「ん?」

「線香花火が消える瞬間に願い事すると叶うっちゅージンクス知っちょる?」

「マジ!?」

「マジ」










仁王が悪い笑顔でニヤニヤと私を見てきた。
どうせジンクスとか信じてる私をバカにしてるんだろう。
いいじゃん別に。これでも一応女の子だし。
占いやおまじないとか少しくらい興味ありますよ。





自分の持っている花火を見ると、すでに火花が小さくなり始めていた。










「仁王も願い事するの?」

「もちろん」

「似合わなーい」

「黙りんしゃい」










スッ・・・っとお互いに目を閉じると私達は願い事を唱えた。















――― こうした時間が・・・いつまでも続きますように。















誰かの手が後頭部に回る感触に目を開けると・・・・・

仁王の髪が・・・目が・・・唇が・・・私の顔の目の前に迫っていた。










「ん?」










声は出せなかった。

仁王の唇はチュッと私の頬に触れ、そのまま耳元で囁かれた。










「叶ったかえ?願い事」










ニヤッと悪魔のような笑いを見た瞬間、私の中のストッパーがものすごい勢いでキレた。










「なっ・・・なぁあぁぁぁー!!?










立ち上がりながら叫び声を上げると、花火を楽しんでいた全員がこちらに振り返った。











「あんた!今!なぁ!?」










動揺しまくっていると仁王も立ち上がり、ニコニコしながら私の唇を指でなぞった。










「無防備すぎじゃよ。 チャン?」










今やその笑顔が悪魔にしか見えないのは私のせいじゃない。
いきなりほっぺにキスしたこいつが悪いんだ。










「に、仁王先輩!!」

「仁王ー!お前・・・今 に何した!!?」










全員の視線が仁王に突き刺さる。
仁王はニコーッと笑顔を向けながら首をかしげた。










「何って・・・キス♪」

「はぁ!!?」










私の顔はもう・・・引き攣るしかなかった。
仁王のシャツを引っ張るとそっと耳打ちをした。










「仁王!な、何でキスなんてしたの!?」

「何でって?そんなん決まっちょる」

「えっ?」










何?と聞こうとすると仁王の長い指が私の唇を押さえた。










「油断しとるお姫さんとちょっとからかっただけじゃ。
 ボケーッとしちょると今度は口にしてやるけぇ覚悟しときんしゃい?」










顔が一気に赤くなる。
仁王の妖艶な笑みに思わず視線を外せず冷や汗を浮かべた。










「嘘っスよね! 先輩キスされたなんて嘘っスよね!!」

「いや・・・キスっていっても、ほっ・・・」

の初チューは俺のもんぜよ」

「仁王ぉー!!?」

「やってくれましたね・・・」

「仁王・・・今この場に何人敵を作ったかな?」

「全員じゃないか?」

「たるんどる!!」

「ハハッ・・・」










柳のブラックリストに仁王が加わったことは・・・言うまでもない。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

チューさせちゃったー。(反省の色なし)

初期設定では本当に口にチューだったのを

「いや・・・まずいか」と考え直しホッペにしました。

仁王は手ぇ早そうだなぁ。っという勝手な妄想。







2008.11.11