「うーん・・・」










鏡の前で私は真新しい制服に身を包み、クルッと1回転してみた。










「って・・・何をやってるんだ私は」













No.5    『幼馴染』













鞄を持って、鍵を握って、玄関に立ったところで私は今日だけで5度目の溜め息をついた。










「今日から学校・・・か」










制服は今日初めて着る高校のもの。
学校は行き慣れていない新たな場所。



なんというか・・・。



不安・・・である。










「私らしくないなぁ」










玄関に座り込んで6度目の溜め息をつこうとした所で、私は顔をあげて頭を振った。










「私らしくない!何も不安がることないじゃない」










みんなも・・・いることだし。
スクッ!と立ち上がり靴を履くと私は勢いよく玄関の扉を開いた。










ガンッ!!










しかし、扉を開いたと同時に鈍い音が響いた。










「はっ!?なに、何の音!?」










数cmだけ開いた扉から顔を出すと目の前には知った顔が立っていた。










「蓮二!えっ、どうしたの?」

「その前にお前・・・謝っておけよ?」










蓮二が下を指差すので何かと視線を下げると・・・。










「さっ・・・!?」










貞治が額を押さえながら座り込んでいた・・・。




















「いや、だからね?わざとじゃないんだよ。本当に」
「眼鏡は無事か?」
「あぁ。額と鼻の骨がひどい損傷を受けたがな」
「だからゴメンって貞治ー!!」










運悪く扉を顔面で受け止めた貞治はムスッとした面持ちで私を見下ろした。
その眼力に思わずたじろぐ私。










「ひ、久しぶり・・・だね」

「・・・そうだな」










パーンッ!!



「いっ!?」










勢いよくデコピンをくらった私はジンジンと痛む額を押さえながら貞治を睨んだ。










「おかえり。










しかし次の瞬間には貞治の大きな手の平が視界に入り、優しく頭の上に置かれた。










「元気にしてたみたいだな」

「うん・・・。うん」










心の奥で何かがじんわりと熱くなった。
こうして3人並ぶとなんだか楽しい。
こうして3人並ぶと、とても安心する。










「貞治・・・。もしかしてまた身長伸びたの?」
「あぁ。成長したろ?」
「しすぎだよ!!(汗)」










一体いつまで成長期が続くんだこの男は。










「お前、今日から学校だそうだな」
「うん。また蓮二と一緒のクラスだよ!」
「なに?」
「・・・何だ貞治。その目は」
。今からでも遅くない・・・青学に来い」

「はっ?」

「どういう意味だ貞治。今度こそ眼鏡を割ってやろうか










蓮二の目が鋭く光り、貞治が受けて立つと言わんばかりに視線を交えた。

なんだ何だこの空気は?今、2人の間でどんなテレパシーが交されているんだ?










「あ、貞治こっちだよね?今度はゆっくりできるときにまた遊びに来てね!!」
「あぁ。それと・・・
「なに?」










貞治はそっと私の耳に顔を近づけると、特有の低い声で言った。










「気をつけろよ?何かされたらすぐに言え」
「誰に?何を?」
「色々」

「はぁ!?」










昨日の蓮二もそうだが・・・データをとることが趣味のくせに色々って何だ。
色々って。曖昧すぎにもほどがある。

貞治はそのまま手を振ると私達に背を向けて去っていった。










「俺達も行くか」
「あ、うん」










その時、フッと気付いた。
家を出るまでは不安で頭がいっぱいだったのに・・・。
蓮二と貞治と一緒に歩いた、ただそれだけで私の不安は綺麗サッパリ消えていた。










「自分でもビックリ・・・」










高校に入って、蓮二は何も変わってないって言ったけど・・・。
やっぱりみんな大人になったと思う。

だからこその不安。
だからこその期待。

どっちのものか分からないドキドキはずっと私に付きまとっていた。










「そういえばお前・・・部活は入るのか?」
「うーん。入らないかな・・・家のこともあるし」
「また、やってみるか?マネージャー」
「えっ?」










振り向くと珍しく蓮二の方から視線を外した。










「前はリハビリにと思って無理矢理やらせたが・・・。またやらないか?」
「また・・・」
「あいつらも喜ぶ」










すぐに返事をしたかった。でも、今の私にはゆっくり考える時間が欲しかった。
それを察してくれたのか蓮二は私の髪を優しく撫でて静かに言った。










「まぁ、ゆっくり考えろ。お前がやりたいと思ったら言え」
「うん。ありがとう」































「高校になっても知ってる顔ばかりだね」










自分の席に座って教室を見渡すと、隣の机で蓮二が私と同じように周りを見た。










「あぁ。立海は特にな」










中学からエスカレータ式の立海にとって進学とは言ってもあまり大きな変化はない。
持ち上がりになるからクラスメイトのほとんどが顔見知りだったりするのだ。










「おっ。いたいた」
「おーい! ー!」

「あっ。ジャッカルとブン太だ」










違うクラスでもお構いなしに入って来た2人は、私と蓮二の前に立って興奮気味に言った。










「なぁなぁ!今日の放課後空いてる?空いてんだろ?」
「空いてるけど・・・なに?」
「全員でさ!パーティー的なことやんね?パァーってさ!!」
「パーティー?」
。おかえりパーティー」

「はっ・・・?」










思わず固まっているとジャッカルが苦笑いしながら言った。










「やりてぇんだとよ。みんな・・・な?」










蓮二を見ると蓮二も「いいんじゃないか?」っと頷いてくれた。










「じゃあ決まりだな!な! ?」

「うん。ありがとう!」










私以上に、周りの皆が喜んでくれたことが・・・嬉しかった。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

なんか長い。なんか長いぞ。

とりあえず今回書きたかったシーンは

幼馴染3人の会話と存在のデカさです。

・・・はい。すみません正直に言います。

乾・ヒロイン・柳 ←この並び順に萌えたかっただけです。







2008.10.18