人の気持ちを全部すくい上げてくれるような人。


「優しさ」は「強さ」でもある気がした・・・。















cry.17   〜 Don’t cry 〜















「今日の練習はここまで!」
「「ありがとうございました!!」」











終わった途端、少し安堵の溜め息をつく
練習はサポートする側も全力のせいで毎回気が張る。
終わってからも仕事は残っているが心に余裕がある分、気持ちが楽なのだ。










「邪魔だ。どけ」
「あ!す、すみません・・・!!」










ネット等の片付けをしていた の後ろに立っていたのは海堂。
どうやら が道を塞いでいたようだ。










「海堂先輩か・・・」










去っていく海堂の背中を見つめながら は呟いた。










「お話してみたいな・・・」




















「海堂先輩?」
「うん」










は家に帰ってからリョーマに今日の話を始めた。










「俺もそんなに話したことない」
「えっ?リョーマも?」

「と言うより、あの人部長くらい無口な人だからね。
 ベラベラ話すのは桃先輩と喧嘩してるときぐらいじゃない?」

「へぇ・・・」











次の朝、 は朝練の準備をするために少し早く家を出た。










「寒っ・・・」










マフラーを押し上げて少しでも顔に突き刺さる冷気を遮ろうと試みる。
思わず早足になっていた時、ある公園の前で は足を止めた。










「あれ・・・?」










公園の端から端までをダッシュで何往復もする頭のバンダナが目立つ人物。
の視線は釘付けになった。










「・・・いつまで見てる気だ」

「えっ!?あっ・・・!?」










しばらく見ていたら、足を止めた海堂が鋭い瞳を に向けた。
どうやら初めから気付いていたようだ。










「あの・・・海堂せんぱ」
「何か用か」
「あ、いや・・・用というか・・・」










が口ごもっていると海堂はフンッと鼻を鳴らして鞄を手に取った。










「あ。」
「?」











は自分の鞄の中を漁ると、タオルを取り出し海堂に差し出した。










「・・・何のつもりだ」
「か、海堂先輩・・・タオルは?」
「忘れた」
「そのままでは風邪をひきます。私のタオルを貸すので・・・」
「別にいい」
「ダ、ダメです!!」










大声で返す に、海堂は思わず目を見開いて驚いた。










「急激な体温の変化は体調を崩します!トレーニングの後にも気を配って下さい!!」










叫ぶように主張をした後にハッ!と我に返った はアタフタと慌て始めた。










「あ・・・す、すみません!いきなり・・・あの、失礼な・・・」










スッ・・・。



「!!」










が手を引こうとした瞬間、タオルを受け取った大きな手。
顔を上げると海堂が相変わらずのヘビ睨みのまま、 の横を通りすぎた。










「借りてくぞ」










海堂が公園を出ていくと、 はギュッと自分の手を握りながら笑みを浮かべた。















次の日の朝。





リョーマの少し後ろを歩いていた は、公園の入口に立っている海堂を見つけた。










「あっ・・・」
「なんで海堂先輩がいるの?」










リョーマが首を傾げる中、 は海堂に駆け寄る。










「お、おはようございます!海堂先輩」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「今日も・・・トレーニングですか?」










海堂は答えず、黙って鞄の中に手を入れると
昨日受け取った のタオルと、可愛らしい小さな包みを差し出した。










「えっ、わざわざ渡しに?」
「・・・早くしろ。いらねぇのか」
「い、いります!ありがとうございます」










が受け取ったのを確認すると、海堂はニヤニヤと笑みを浮かべる
リョーマを一睨みし、背を向けて去って行った。











がタオルを貸した相手、海堂先輩だったんだ」
「うん・・・」










綺麗に洗濯され、畳まれたタオル。
同時に受け取った小さな包みを開いてみると、中には香ばしい香りのクッキーが入っていた。










「リョーマ・・・」
「ん?」

「海堂先輩って、話すと凄く優しい人だね」
「らしいね」










その日の部活は と海堂が急激に仲良くなったことに、リョーマ以外の部員がかなり驚いたという・・・。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ヒロインと海堂先輩との絡みでした。

ポワァーっとしてちょっと抜けているヒロインを

たまに気にしてチラチラ様子を見ていればいいよ。

そして気付かれないように助けてればいいよ!!







2010.6.2