笑顔には2つあると聞いたことがある。
心からの自然な笑顔と・・・
偽りだらけの嘘な笑顔・・・
cry.16 〜 Don’t cry 〜
「カルピン?カルピーン!」
日曜日。今日は学校も部活もない貴重な休日。
それなのにも関わらず、
は焦った表情で公園の木の影や茂みの中を覗き込んでいた。
「どこ行っちゃったんだろ・・・?カルピン」
今朝の出来事。
が家事の手伝いをしていたとき、うっかり開けっ放しにしていた扉からカルピンが逃げ出したのだ。
迷惑をかけることが嫌だった
は、誰にも言わずに1人でカルピンを追い掛け・・・今に至る。
「あれ・・・ここ、どこ?」
付け足しておこう。迷子にもなっている。
「ほぁらー」
「カルピン!?」
振り向くと、カルピンが優雅に尻尾を揺らしながら公園を出ていく姿を確認した。
「ま、待って!カルピン・・・!!」
慌てて追い掛ける
。
公園を飛び出した瞬間、ハッ!と足を止めた。
「あっ!」
「やぁ。
さん」
「こんにちは・・・不二先輩」
柔らかな笑みを向ける不二は、足元にいたカルピンをそっと抱き上げた。
「この猫・・・
さんが飼ってるの?」
「あ、えっと・・・飼ってるというか・・・あの」
リョーマの家に居候をしていると言いにくい
は曖昧な返事を返すだけだった。
不二の腕の中にいたカルピンが
の元に戻る。
「不二先輩・・・それ、テニスバッグですか」
「ん?あぁ、少しやってきたんだ」
「お休みの日もテニスですか?」
「うん」
「へぇ・・・」
感心する
を見て、不二はフフッと笑った。
「
さん。少し、話さない?」
自動販売機でジュースを買ってから、不二は
をつれて公園のベンチに腰掛けた。
「はい。
さんの分」
「あ、ありがとうございます・・・」
カルピンは
の膝の上で丸くなって眠っている。
「そういえば僕達、
さんがマネージャーになってからこうしてゆっくり話すの初めてだね」
「はい・・・そうですね」
「
さん、初めて会った時僕のこと『怖い』って思ったでしょ?」
「えっ!?いや、そんな・・・」
「クスッ。隠さなくていいよ?
さんの顔を見ていれば分かるから」
「す、すみません・・・初めは、少しだけ」
で、でも!と
は顔をあげて不二を真っ直ぐ見つめた。
「今は・・・今はそんなことありません。絶対に」
「うん。ありがとう・・・」
「あっ・・・」
不二がニッコリ笑うと、逆に
は悲しげな表情を浮かべた。
「ん?なに」
「いえ・・・あの、不二先輩」
「どうしたの?」
「無理に笑ってしまうのは・・・不二先輩の癖、ですか?」
「えっ・・・?」
不二は目を見開いて驚く。
は変わらぬ表情で見つめ続けた。
「
さん・・・なに言って」
「わ、わかります。不二先輩の・・・顔を見れば」
先程の不二の言葉を返す
に、不二は観念したように息を吐いた。
「バレてたんだ。
さんには」
「あ、すみません・・・余計なことを」
「いや。少し、嬉しかったから」
不二はそっと
の髪を撫でると目を細めた。
「逆だね。僕ら」
「えっ?」
「素直になれる・・・君が羨ましいな」
髪を撫でていた不二の手が頬に移り、動けない
に顔を近付けた・・・。
「えっ・・・?」
「
!!」
遠くから聞こえた名前を呼ぶ声に、不二はパッ!と
から手を離した。
「リョーマ?」
走ってやってきたリョーマは、到着するなりニッコリ笑っている不二を無言で睨み付けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「クスッ。何もしてないよ」
不二はもう1度
の頭にポンッと手を置くと、テニスバッグを担ぎ直した。
「それじゃ、また部活でね。越前、
・・・いや、
?」
「!!」
「は、はい」
クスッという笑いを残して、不二はそのまま公園を出て行った。
その様子をリョーマは面白くないといった表情で見つめていた。
「こんなとこで何してんの・・・1人で出ていって」
「えっ?あの・・・カルピンが、逃げちゃって・・・追いかけてて」
「何で俺に言わなかったの。2人で探せばよかったじゃん」
「1人で大丈夫・・・だと思って」
「それで結局こうなってるじゃん。言いなよ、すぐに俺に。どんだけ心配したと思っ・・・!」
「・・・リョーマ?」
「なんでもない」
帽子を下げるとリョーマはカルピンを片腕で抱き上げて、もう片方で
の手を握った。
「えっ?」
「もう・・・迷子にならないように」
手を繋いで歩き出したリョーマと
。
お互いの顔が赤くなっていることには・・・2人とも気付かないままだった。
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ヒロインと不二先輩との絡みでした。
この2人はちょっと不思議な関係になりそうですね。
でも、不二先輩なりにヒロインを想っていそうな・・・。
越前との関係を優しく見守っていそう・・・!!!
2010.4.16