そのままの自分をさらけ出すことが出来る人間は一握りしかいない。
分からないようで・・・
実は人のために自分を隠す人間がほとんどだ。
cry.15 〜 Don’t cry 〜
「あ。」
「!」
廊下でバッタリと出会った手塚と
は、お互い一瞬だけ足を止めた。
「お、おはようございます・・・」
「あぁ。おはよう」
それだけ言うと、そのまま通りすぎようとする手塚を
は思わず呼び止めた。
「あ、あの・・・!!」
「・・・なんだ」
「あ・・・いや。えっと・・・」
はキュッと口を結ぶと深々と頭を下げた。
「ありがとう・・・ございました」
「何の話だ」
顔を上げると
は俯いた。
「こんな私を・・・マネージャーとして選んで下さって」
「それなら越前に言うんだな。
を推薦したのは越前だ」
「はい。もちろん越前にも感謝してます」
「それならいい。今後もよろしく頼む」
「は・・・はい!!」
再び背中を向けて歩き出した手塚に向かって、
は精一杯の返事を返した。
■
放課後、ジャージに着替えた
はいつも通り、テニスコートの準備をしていた。
「
。ちょっといいか?」
「はい?」
手を止めて手塚のもとへ駆け寄ると、手塚は1枚の紙を
に手渡した。
「今日から新しいメニューを試してみようと思う」
「えっ?」
「お前の率直な感想を聞かせてほしい」
見ると、渡された紙にはいつもと違う練習メニューが詳しく記されている。
は訳も分からないままメニューに目を通した。
「えっと・・・」
「なんだ?」
「この・・・ランニングとミニゲームの間に、休憩を入れたいんですけど・・・。
も、もしくはダッシュとミニゲームを入れ替えた方が・・・皆さんの負担が軽い、かと」
「わかった。そうしよう」
「えっ!?あ、でも私なんかの意見を・・・!!」
背を向ける手塚を
は慌てて引き止めるが、手塚は至って
落ち着いた様子で
の手からメニューの紙を受け取った。
「お前の意見だからな」
「えっ・・・?」
「誰の意見でも聞くわけじゃない」
それだけ言うと、手塚は再び部室へ戻っていった。
「えっと・・・」
「
」
「あっ・・・越前」
後ろから聞こえた声に
が振り向くと、リョーマはいきなりムスッと不機嫌な表情をして見せた。
「リョーマ」
「えっ?」
「リョーマって呼んでって言ったじゃん。聞いてなかったわけ?」
「あ、ううん。ごめん、リョーマ」
が言い直すと、リョーマは軽く笑みを浮かべた。
「見てたよ。さっきの」
「そう・・・でも、手塚部長は何で私の意見なんか」
「
の意見だから・・・でしょ?」
「えっ?」
わかっていない様子の
に溜め息をつきながら、リョーマはラケットで
の頭を軽く叩いた。
「だから・・・『信頼』ってやつ」
「信頼・・・?」
「きっと部長は、メニューを
の言った通りに変更してくるよ」
そして、リョーマの言った通り・・・手塚は
の提案通りにメニューを変更して練習を進めたのだった。
「今日の練習はここまで!!」
「「「はいっ!!」」」
練習も終わり、片付けをしていると手塚がゆっくり
に歩み寄った。
「
」
「あ、はい」
「ありがとう。また頼む」
手塚の思わぬ言葉に驚く
だったが、同時にリョーマの言葉を思い出した。
――― 『信頼』ってやつ。
「は・・・はい!ありがとうございます!」
返事をして頭を下げる
を見て、手塚は一瞬・・・柔らかな笑みを浮かべた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ヒロインと手塚部長との絡みでした。
手塚部長は少し絡みづらい方ではありますが
なにより仲間を信頼し、大切にしています!!
フッ・・・と一瞬だけその本心が覗けるんです!!
2010.3.21