「強さ」は力じゃない。


人へ差し伸べられる気持ちこそが「強さ」















cry.14   〜 Don’t cry 〜















、帰らないの?」
「・・・うん。まだ」










は帰る支度を整えたリョーマに向かって部誌を見せた。










「これ書いたら帰る・・・から、先に行ってて」
「ふーん?わかった」










越前はそう言うと1人先に部室を出て行った。










「あ、おい!待てよ越前!?」
「おチビー!?あ、じゃあ ちゃん!あまり遅くならないでね?」
「はい。ありがとうございます」










部室を出て行く3人を見送ると、 は再び視線を部誌に戻してペンを走らせた。










「おい!越前!!」
ちゃん置いて行っていいのー?」
「良くない・・・けど」
「ん?」



「もう無理に、あいつの嫌がることしたくないんで・・・」










その言葉に桃城と菊丸はもう何も言えなくなってしまった。































「しまった・・・」










は時計を見て愕然とした。
部活が終わってからすでに2時間が経過している。
仕事に夢中になりすぎたのだ。










「か、帰らなきゃ」










ガチャッ!!





「あれ!誰かと思ったら、 ちゃんじゃないか」
「河村先輩・・・?」










突然扉を開いて部室に現れたのは、家に帰ったはずの河村だった。見ると私服のままだ。










「何やってるんだい?こんな遅くまで」
「部誌を書いていて・・・ついでに部室の整理をして、そのついでに掃除をしていたらこんな時間に」

ちゃん・・・意外と天然?」










は首を横に振ると河村に質問を返した。










「か、河村先輩はどうして・・・」
「あぁ、忘れ物を取りにね。明かりがついてたから驚いたよ」
「すみません・・・」
「家の人が心配してるだろ。送ってあげるから、一緒に帰ろう?」
「えっ、でも・・・」
「断ったら、こんな時間まで仕事してたこと手塚に言っちゃうよ?」










河村の笑顔に は何も言い返せなくなった。










「すみません。お願い、します・・・」
「うん。じゃあ忘れ物を探すから待っててくれるかい?」










はコクンッと頷くと、帰り支度をして部室を出た。
ハァー。っと息を吐くと白い煙となって漂い、消えた。
不思議と寒さを忘れ、浮かぶ月の美しさにしばらく見とれていた。










「何してんのー?」





「えっ?」










ハッと我に返り振り向くと、ピアスを光らせたいかにも遊び人のような男3人が に歩み寄ってきた。










「いや、あの・・・」
「1人?」
「いえ・・・先輩を待ってて」
「先輩だって。じゃあ、その先輩も誘って5人で遊びに行かない?」
「いや・・・」
「いや。だって、かーわいぃ」










1人の男が肩に手を回すと、 はビクッ!と体を震わせた。










「やめっ・・・!!」

「やめろよ!!」










突然、響いてきた声に振り返ると、河村が今までに見たことのない形相で立っていた。










「先輩・・・」
「なんだ。先輩って男かよ」
「邪魔すんなよな!!」










1人の男が河村に殴り掛かる。
しかし河村はそれを避け、振り上げた拳は男の顎を捕らえた。










「くっ・・・!?」










寸前で動きを止める河村。男は次の瞬間、膝から崩れた。










「こいつヤベェよ!!」
「もういいから行こうぜ!!」










男3人は逃げるように去って行くと、 の心臓は遅れてドキドキと激しくなった。










「大丈夫かい? ちゃん」
「河村先輩・・・あっ」










河村からは先程の形相は消え去り、いつもの優しい笑顔に戻っていた。










「ごめんね」
「えっ?」
「俺のせいで怖い思いをさせたね」










は首を横に振った。










「違います。先輩は・・・私を助けてくれました」










カタカタと震える体を無理矢理押さえ込みながら笑みを浮かべる。
河村は息を吐くと、そっと を抱きしめた。










「えっ・・・?」
「やっぱり、怖かったよね。もう大丈夫だから」










体の震えはしだいに治まり、河村の鼓動を耳に は落ち着きを取り戻した。










「何やってるんスか・・・」

「「えっ?」」










その瞬間、河村と の表情は一気に凍りついた。
リョーマが不機嫌オーラを漂わせながら2人を睨み付けていたから。










「越前・・・!?」
「えっ、なん!?」


があまりに遅いから迎えにきたら・・・河村先輩?」

「いや!違うんだ越前!!」
「あの、不良が・・・!!」

「理由なんて聞いてないよ」










の腕を引いて河村から引き離すと、リョーマは河村に向かって一睨みした。










「じゃ、失礼します。河村先輩?」
「あ、あぁ・・・」
「河村先輩!あの、ありがとうございました」










引きずられるように連れていかれる に手を振りながら、河村はクスッと小さく噴き出して笑った。















「え、越前!いい加減、手・・・離して」
「ヤダッ」
「えっ?」










強く の手を握ったままリョーマは振り向いた。










「あと、呼び名も嫌だ」
「はっ?呼び名・・・?」
「リョーマって呼んで。俺も って呼ぶ」
「えっ、うん?わかった・・・」










それから家に帰った は南次郎にかなり怒られたという・・・。















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ヒロインと河村先輩との絡みでした。

河村先輩と言えば温厚か〜ら〜のバーニング。

でも、バーニングでなくとも喧嘩をする河村先輩ってカッコイイと思う。

抱きしめたとき、実はちょっとドキドキしてればいい。







2010.2.13