明るく笑う者を見る度に思う。


私は上手く笑えているだろうか・・・?















cry.12   〜 Don’t cry 〜















「あー!もーダメ!疲れたにゃー!!」










悲鳴を上げてその場に座り込んだのは、何も菊丸だけではない。
レギュラージャージを着たメンバーに加え、グラウンド30周を走り抜いたテニス部員全員が
肩で息をしながら倒れるように崩れていく。










「ドリンクです」
「あ!ありがとう さん」

「はい」
「サンキュー。

「先輩・・・大丈夫ですか?」
「うぅー・・・ドリンクー」










ドリンクを受け取り、一口飲むと菊丸はパッ!と顔を上げた。










「おいしー!」
「確かに・・・」
「へぇー」










口々に驚きの言葉が飛び出す中、その意味が分からずアタフタしている に菊丸が飛び付いた。










「これ、 ちゃんが作ったの?」
「えっ!?あ、はい。一応・・・」
「おいしいよ。ちょっぴりスパイシーで」
「あ、ありがとうございます・・・」
「はっ?スパイシー?」










不二の感想に部員全員が首を傾げた。










「どこがスパイシーなんだよ不二ー。甘いの間違いだろ?」
「英二のは甘いのか?俺のは逆に甘さは控えてあって飲みやすいけど・・・」
「えっ?どういうこと?」










全員の視線が に向く。
今度は が首を傾げながら菊丸のドリンクを指差した。










「ド、ドリンクは全て味が違います。皆さんの好みに合わせて作ったので・・・」










その言葉に全員が呆気にとられた。
手塚までもが驚いたように自分のドリンクを見つめ直した。










「えっ・・・えっ?全部?全部、 ちゃんが俺達の好みの味にドリンク作ったの?」
「はい」
「すげぇ・・・」
「その、俺達の好みっていうのはどこで・・・」
「あっ、乾先輩からデータノートを見せていただいて」










今度は全員が驚愕の表情を浮かべて乾に顔を向けた。










「?なんだ」
「まさか乾の意味わかんないデータがここで役に立つなんて・・・」
「その前に乾が大事なデータを他人に見せたっていう方が・・・驚きじゃない?」










不二の言葉に全員が頷く。










「確かに」
「でも凄いにゃー! ちゃん!!」
「うわっ!?」










後ろから抱き着いた菊丸は満面の笑みを浮かべながら、慌てる の頭を撫でた。










「こらっ英二! さんが困ってるだろ!?」
「えー?大丈夫だよ。ねー、 ちゃん?」










顔を覗き込む菊丸と目を合わせると は「はぁ・・・」と気が抜ける返事を返した。
それから菊丸は暇を見つけては仕事をする の手伝いか・・・
もしくは邪魔をするために を探すようになった。










ちゃん見っけ♪」
「菊丸先輩・・・?」
「何してんのー?」
「洗濯です」










それだけ言うと はまた背を向けてタオルを干し始めた。










「手伝ってあげる!」
「あっ、ちょっと!?」










から真っ白なタオルを取り上げると、菊丸はパッパッと手際よく洗濯物を干し始めた。










「ダ、ダメですよ!先輩に洗濯させるなんて・・・!!」
「いーから!いーから!だって ちゃん、いつも仕事全部1人でやってるじゃん!」
「そ、それはマネージャーだから当然で」
「うんにゃ! ちゃんはちょっち働きすぎ。みーんな言ってるよ?」
「えっ・・・」










はポカンッと呆気に取られると、菊丸は逆にニッコリ笑みを浮かべた。










「初耳です・・・」
「だろーね!正直、 ちゃんの頑張りには俺達の方が驚いてるんだよ?」










両手で の頭を包み込む菊丸。
何をするのかと首を傾げていると、いきなりワシャワシャと乱暴に の髪を撫で始めた。










「う、わっ!?」
ちゃんはいつ見ても固い顔してるにゃー。もっとリラックス、リラックス〜」










パッ!と手を離すと の髪は乱れ、ボサボサと広がってしまった。
それを見た菊丸がプッ!と噴き出す。










「あははははっ!! ちゃん最高ー!!」
「き、菊丸先輩がやったんじゃないですか!!」
「んー?」










怒り出した を見て、菊丸はニコッと笑みを浮かべた。










「いい顔♪」
「はっ!?」
ちゃんって、いっつも悩んだような顔してるからさ!そうやって感情のまま顔に出せるって知って安心した」










は目を見開いて動揺した。
言葉が上手く見つからず、ただ口を開いては閉じて俯いてしまった。










「菊丸先輩は・・・」
「うん?」
「どんな時に笑いますか?」










その言葉に菊丸は明るい、光るような笑顔を だけに向けた。










「そりゃあ・・・笑いたい時に笑うっしょ!!」










今度は が小さく噴き出して、つられて笑った・・・。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ヒロインと菊丸先輩との絡みでした。

菊丸先輩はとにかく自由。そして素直。

そんな菊丸先輩に対して少しだけタジタジなヒロイン。

でも、それがいい!!(熱弁)







2010.1.16