ただ、無我夢中だった・・・。


がむしゃらだった・・・。


ただ、伸ばせるだけ手を伸ばしてた・・・。















cry.10   〜 Don’t cry 〜















ガラッ!!



「ただいまー」
「た、ただいま帰りました・・・」

「おかえりー」










煙草をくわえた、いつもの調子で出迎えに来た南次郎はニヤッと口角を上げてみせた。










「どうだった。マネージャー業は?」
「つ、疲れました・・・」
「あれくらいで?意外と体力無いんだね」










リョーマの言葉に はムカッ!と顔を上げて睨み付けた。










「ハッハッハッ!まぁ初日だからな。これから慣れてくさ」










ポンポンッと頭を撫でる南次郎に、 は顔を赤らめながら俯いた。










「そんなに疲れたんじゃ腹も減ったろ?早く着替えて来い」

「わかった」
「はい」










自分達の部屋にそれぞれ戻ると、リョーマは制服を脱ぎながら先程の を思い浮かべた。










俺にはあの態度で・・・

親父にはあの顔か・・・。










「ん?」










何で今、少しムカッてしたんだろ?

首を傾げながら着替えを済ませると、リョーマは部屋を出て食卓についた。




















「あのくせっ毛で、ニャーニャー言ってるのが菊丸先輩。バンダナ付けた蛇みたいな人が海堂先輩」
「菊丸先輩に・・・海堂先輩。今日私に仕事を教えてくれたのが?」
「大石副部長」
「大石先輩・・・っと」










夕飯を食べ終えると、 はリョーマに男子テニス部の写真を見せてもらいながら部員の名前を覚えていた。










「ねぇ・・・越前」
「なに?」
「不二先輩ってさ・・・普段怖い?」
「はっ?」










首を傾げると、 は慌てたように手を左右に振った。










「あ、怖いって言っても「怒ると恐い?」って意味じゃなくて!
 なんか・・・何考えてるか分からない感じ。とか」

「あぁ。たまに顔変わるんだよね・・・あの人」
「えっ?」
「でも、悪い人じゃないよ」










は一瞬間をあけると「そっか」と言って立ち上がった。










「ありがとう。また聞いてもいい?」
「別に」
「じゃあ、おやすみ。また明日ね」











部屋を出て行こうとする を、リョーマは背を向けたまま呼び止めた。











「ん?なに」










「もし何かあったら・・・俺に言えば」










ぶっきらぼうな言葉に、 は一瞬キョトンとした顔で固まったが・・・
しばらくするとフッと小さく笑みを浮かべた。















「わかった。言う」















パタンッ・・・。










意外だった の反応に、今度はリョーマが固まった。










(笑った・・・)











ガラッ!!





「あら、リョーマさん。 ちゃんとお勉強じゃなかったの?」










入れ違いでやってきた菜々子はリョーマが1人な所を見て首を傾げた。
どうやら2人で勉強をしているのだと思い、お茶を持ってきたようだ。










「違う。先輩達の顔と名前を教えてた」
「そう。マネージャーさんですものね」










リョーマに1つお茶を渡すと、 用に持ってきたお茶を眺めながら菜々子は笑った。










ちゃん・・・辛かったでしょうね。ずっと1人だったみたいだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「でも、そんなこと思わせないくらい元気で、笑ってて・・・」
「強がってるだけじゃん・・・」
「だとしたら、私達が助けてあげたいね」










そう言い残すと、菜々子は静かに部屋を出ていった。































「手塚部長。頼まれていた試合結果が仕上がりました」
「あぁ。乾に渡しておいてくれるか?」
「はい」










キョロキョロと辺りを見渡しながら はリョーマの元へ駆け寄っていった。










「え、越前・・・乾先輩って」
「あぁ、あそこでノートとってる眼鏡の人」
「あ、あっ!そうだった。ありがとう」










まだ頼りない動きだが、確実に仕事をこなす はすでに部員から信頼される存在になっていた。










、そろそろ休憩に入る」
「はい!それならタオルとドリンクを持ってきます。あと、次のメニューのことなんですけど・・・」










リョーマはその様子を見つめながら静かに笑みを浮かべた。
マネージャーを始める前と後で の表情には微妙に変化が見られたからだ。










「あいつ・・・」










よく笑ってる。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

越前の狙い通り、ヒロインちゃんに変化が現れました。

笑うって言っても、まだ薄く笑みを浮かべる程度ですけど

ここから少しずつ変化が見られるようにしたいと思います!

あと、気持ちの変化も(笑顔)





2009.10.26