痛くはない・・・。


苦しくもない・・・。


あるのはただ・・・ポッカリ空いた空虚感。















cry.5   〜 Don’t cry 〜















、今日の放課後空けといて。部長に紹介するから」
「・・・ヤダ」










朝食の席で私は目玉焼きを頬張りながら首を振った。










「なんで?」
「・・・マネージャーになるなんて・・・私1度も言ってない」
「当たり前じゃん。俺がそう決めたんだもん」










こいつ・・・!!





私は拳を握りながら沸き上がる怒りをなんとか抑えた。










「だいたい・・・何で急にそんなこと」
「分かった事があるから」










越前の言葉の意味が分からず、思わずじっと顔を見つめていると
ヒョイッと私の皿からウインナーを1本奪って口の中へ放り込んだ。










「あっ!ちょっ・・・!?」
「あんたは笑えないわけでも、人と話せないわけでもない・・・」










牛乳を一気に飲みほすと越前は席を立った。










「ただ「忘れてる」だけでしょ。だったら俺が何とかしてやるよ」










それだけ言うと越前は席を立ち、テニスバッグを担ぐと先に家を出ていった。
全く意味が分からない・・・。
隣では菜々子さんがニコニコしながら私を見つめている。










私はこれから・・・どうなるんだろう?































放課後。廊下を歩いていると後ろから聞き慣れた声が響いてきた。










「よぉ!越前!!」
「あっ、桃先輩」
「聞いたぜぇ?お前、手塚部長にマネージャー推薦したんだって?なぁなぁ。どんな子だ?」
「まだマネージャーになるって決まったわけじゃないんスけど・・・」

「いいじゃねーか!手塚部長だって結構その気だったし
 いい子だったら間違いなく採用だろ。なぁなぁ!どんな子なんだよ!!」










ガシッ!と俺の肩に腕を回す桃先輩。
んー・・・。っと少し悩んだ後、その腕を払いながらカルピンと戯れる を思い浮かべた。










「猫・・・みたいな」
「はぁ!?」
「まだ警戒してるみたいだけど」
「おい。全っ然意味わかんねぇよ・・・」
「あっ・・・見つけた。 !」










リョーマが昇降口に向かって呼び掛けると、今まさに帰ろうとしていた
女子生徒がビクリッと肩を震わせて振り向きもせず靴を履き始めた。










「あっ、逃げる」
「えっ?逃げる?」










リョーマは駆け出すとその女子生徒・・・ の制服の襟を掴んだ。










「ぎゃっ・・・!!」
「ここで待っててって言ったじゃん。今から部活行くよ」
「い・・・行かない」
「ダメ。拒否権なし」










キッ!と睨み付ける をリョーマは軽く受け流すと
自分も靴を履きズルズルと腕を引きながら部活へ向かった。










「え、越前!まさかマネージャーに推薦って・・・この子か!?全然承諾してねぇじゃねーか!!」
「大丈夫っス。もうOKもらってるんで」
「し、してない・・・!!」
「ほらぁ!お前、無理やりってのはあまりにも・・・って!オイッ越前!!」










問答無用でついにテニス部部室まで連れて来たリョーマ。
は力では敵わないと気付いたのかガックリとうなだれていた。










「部長。マネージャーの件で・・・」
「あぁ。言っていた子か・・・では部室で話をしよう」










リョーマが頷き部室に連れて行こうとすると、 が何度目かの抵抗に制服をクンッと引っ張った。










「なに?」

「何で・・・何でそんなにしつこくマネージャーにしようとするの・・・」
「んー・・・。自分でもよく分かんない・・・でも、たぶん心配だからだと思う」
「心配・・・?」

「あんた学校でもずっと1人じゃん。
 もっと人と関わった方がいいんじゃない?マネージャーになればテニス部と・・・」

「べ、別に私が1人でいようが関係ないじゃない・・・ほっといてよ・・・!!」

「嫌だ。何でそうやって孤独になろうとするの?あんたが笑えない理由って寂しいからじゃないの?」

「っ!!」










パンッ!!










乾いた音がテニスコートに響く。
リョーマは殴られた左頬に触れながら に視線を戻した。










「えっ・・・」










リョーマは言葉を失った。
の瞳からポロポロと大粒の涙が零れ落ちていたから・・・。















「何も・・・何も知らないくせに」
















の目は・・・見たことないほどキツく吊り上がっていた。










「越前。やめろ」










先に部室へ向かっていた手塚が異変に気付き戻ってくると、まずリョーマと を離れさせた。










「マネージャーの件は後にしよう。悪いが今日は帰ってもらえるか・・・?」










手塚は にハンカチを渡すとそっと背中を押した。
はコクンッと頷くとハンカチを受け取り、鞄を握ると逃げるように走り去っていった。










「越前!大丈夫かよ!?」
「まさかおチビが女の子泣かせるなんてにゃー!!」
「やめろ英二!越前・・・とりあえず冷やさないと」
「平気っス・・・」










リョーマは大石の手を払うと1人で部室に入り、ドサッ!と鞄を床に置いた。










「知らないくせに・・・か」










その日リョーマは の泣き顔が頭から離れず・・・部活に集中することができなかった。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

殴っちゃったよー。

泣かせちゃったよー。

なぜか、書いた俺が1番驚いてます(どゆこと)







2009.3.15