頭の中の重い何か。


胸の中の気持ち悪いモヤモヤ。


それはいつの間にか・・・私に付き纏っていた。















cry.3   〜 Don’t cry 〜















朝、目を覚ますとヒヤッと冷たい空気をまず感じた。
今日も寒くなるのかな?布団の中で顔を起こした所で昨日あったことを思い出す。

あっ・・・ここ越前の家だっけ。

そうだ。そうだ。思い出した。
どうしても家に帰るのが嫌で公園でただ時間が過ぎるのを待っていたら越前が来て・・・。

拾われた・・・って。



猫か私は。



起き上がって、音がする方へ向かうと台所で越前のお母さんと菜々子さんが
朝ご飯の準備をしているところだった。










「あらっ。おはよう ちゃん!早いのね!」
「・・・おはようございます」
「そうだ! ちゃん、準備が出来たらリョーマさんを起こしてきてくれない?」










私は頷くと洗面所を借りて顔を洗った。
部屋に戻ると制服に着替え、髪を整え、教わった越前の部屋の扉をノックした。










コンコンッ・・・。





「・・・・・・・・・・・・・・・。」





コンコンッ!!





「・・・・・・・・・・・・・・・。」





コンコンコンコンッ!!!










返事がない・・・!!

無視されているのか、それともまだ寝てるのか。

勝手に部屋に入るわけにもいかず部屋の前でオロオロしていると
カリカリカリッと扉を引っかく音が内側から聞こえてきた。










「・・・えっ?」





カリカリカリカリッ・・・!!










ど、どうしよう・・・!?あきらかに扉の中の何かは外に出たがっている!?
私は申し訳ないと思いながらも、ドアノブを捻ってそぉーっと扉を開いた。










「ほぁらー」

「わっ!?」










突如現れたのは青い目をしたタヌキ・・・いや、青い目をした猫だった。










「猫・・・」

「ほぁら」










猫はその場にチョコンと座ると私の方をじぃーっと見つめて動かなかった。










「えっと・・・」










私も座って同じ目線になると、そっと手の平を頭に乗せてゆっくり撫でてみた。










「なぁーぉ」

「おぉ!?」










飛び付いてきた猫に驚きながらも抱き留めると、フワッとシャンプーのいい香りが鼻をついた。















「へぇー。珍しいじゃん」










顔を上げると越前が眠そうにあくびをしながら部屋から出てきた。










「カルピンが知らない人間に懐くなんてさ」
「カルピン・・・?」
「その猫の名前」










視線を下げると青い目がじーっと私を見つめ続けている。










「カルピン?」と名前を呼ぶと自分の事だと分かっているのか元気よく返事を返してきた。










「似てるね」










いきなり越前が言ってくるもんだから「・・・何が」とぶっきらぼうに答えると
少し笑って私とカルピンを指差した。










「あんたとカルピン」
「・・・はっ?」
「だからカルピンも懐いたんじゃないの?仲間意識ってやつ?」










それだけ言うと越前はまた1つあくびをしながら洗面所へ向かっていった。



私とカルピンが似てるって・・・似てるって?










「つまり私は猫みたいだと言いたいのか・・・」










頭を撫でるとカルピンも「ぬー?」と唸るのだった。









































学校に行ってからの の態度は本当にクールなものだった。
家を出た途端別々の道で登校し、廊下ですれ違っても目を合わせることさえしなかった。



そしてどうやら・・・ の周りには特別仲が良いという友達がいないらしい。
はいつでも1人で、いつでも孤独だった・・・。










「ねぇ。何読んでるの?」










昼休み。

図書室で1人本を読んでいた の顔を覗き込むと、一瞬顔を上げて再び本に視線を戻した。










「まぁ、別に興味ないけど」










リョーマは向かいの席に座ると頬杖をついてじっと を見つめ続けた。










「・・・なに?」

「あんたってさ、しゃべらない上に笑わないよね」










その言葉に はビクッと体を震わせた。










「無口とはまた違うよね。人と話したく無いの?それとも・・・話せないの?」





バンッ!!










は読んでいた本を机に叩き付けるように閉じると立ち上がり
そのまま図書室を飛び出していった。



まるでリョーマの質問から逃げるように・・・。










(これも一応、感情表現ってやつ?)










リョーマは が置いていったファンタジー小説を見つめながら溜め息をついた。















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

おっと。核心を突くような一言を言ったか。

動物となぁんか心通わす人っているじゃないですか。

ヒロインはそんな感じの人間にしたいです。

カルピンと友達にしたいです。






2009.1.30