ひとり・・・ヒトリ・・・ひとりぼっち・・・。


色もない、音もない、匂いもない・・・。


そんな空間に・・・私はいた。















cry.1   〜 Don’t cry 〜















夏が過ぎてすぐ、最近寒さが急に本格的になってきた。
時間は日もすっかり暮れた午後6時。
この季節になると日暮が本当に早い。



そんなことをしみじみと感じながら彼・・・越前リョーマは帰り道を急いだ。










「寒すぎ・・・」










カタカタと肩を揺らしながら少し急ぎ足で曲がり角を直角に曲がった。










ガツッ!!



「おわっ!?」

「ぎゃん!!」










視界が切り替わった瞬間、何か大きな物に躓きそのまま前に転がった。










「いって・・・!!」










一瞬何が起こったのか分からず、とりあえず痛む腰を摩りながら
地面に落ちたトレードマークの帽子を探した。










「あれっ?」










しかし暗いせいか、なかなか見つからない。
すると後ろからトンッと肩に何か触れた。
何だ。と振り返るとそこにはリョーマが探していた帽子を差し出す少女がいた。










「ん。」

「あっ・・・ども」










帽子を受け取り、キュッと被り直すと少女は黙って立ち上がり
何も言わずに闇が続く道の中へ消えていった。










「・・・何だ?」










思わずリョーマはその場に座り込んだまま首を傾げたのだった。




















次の日・・・。

今日は朝から妙に気持ちが悪い天気だった。
今にも雨が降りそうな・・・。





『本日は午後から天気が崩れる恐れがあります。折り畳み傘をお忘れなく!』





訂正。今にも雨が降るそうだ。










「母さん・・・今日も和食じゃないの?」
「フフッ。おばさまは本当に洋食好きですから」










でも、たまには和食だっていいのに・・・。



ブツブツと文句を言いながら時計を見ると、なんともう遅刻ギリギリじゃないか!
急いで朝食を口に詰めるとリョーマは家を飛び出した。















「おいっ、越前!お前テスト中寝てたくせに何だよあの順位!!」

「順位?」










教室に入りながら「あー。間に合った」なんて一息ついていたら
堀尾が朝とは思えないテンションの高さで目の前に現れた。










「中間テストの学年順位だよ!この堀尾様を差し置いて上位に名前なんか乗りやがって・・・クッソー!!」
「そんなの、自業自得でしょ」

「うわっ!腹立つ!!確かに勉強しなかったけどさ・・・。
 まぁ1位は相変わらず だったけど、あいつはもう別の世界の人間って感じだろ!!」

・・・?」










初めて聞く名前だった。
元々、人の名前と顔を覚えようなんて努力はしない方だが。



堀尾はリョーマのリアクションにあんぐり口を開けて固まった。










だよ!入学してから今までずっと学年1位の!!」

「知らない」










キッパリ言い切ると堀尾は大袈裟に溜め息をついて見せた。
しかし、話だけ聞くとずいぶんと「優等生」らしい。



まぁ・・・覚えてないんだけど・・・。










「あっ、越前!あれだよ!あれ!!」










突然興奮したように背中をバンバン叩いてくる堀尾。

痛い・・・。





廊下を指差すので目を向けると、1人の少女がうちのクラスを横切るのが見えた。










「あれが だよ!隣のクラスだぜ!?」










ガタッ!!





突然立ち上がったリョーマに、堀尾は驚いて飛びのいた。










「お、おい!どこ行くんだよ越前!!」










堀尾が止めるより早くリョーマは廊下に飛び出すと
先程見た少女の姿を確認し咄嗟に彼女細い腕をつかんだ。










「待って!」

「っ!?」










驚き振り返った少女の顔を見てリョーマは確信した。
少女の・・・ の頬に軽い擦り傷が残っていた。










「昨日、ぶつかった人だよね?」

「あっ・・・」










もまた、その言葉に覚えがあるのか小さく頷いた。










「昨日はゴメン。って・・・言い忘れてて」
「・・・いい」
「えっ?」
「別にいい・・・」










パッ!とリョーマの手を振りほどくと、 はそのまま自分のクラスへと入っていった。










(そんなに怒ったかな・・・?)










でも「別にいい」と言われたのだから。
リョーマはそれ以上は気にしないことにした。










その日の部活中・・・先輩である桃城と試合をしようとした矢先

ポツッ・・・ポツッ・・・。と冷たい雨がリョーマの頬を打った。










「雨か・・・。どうする手塚?」
「本降りにならないうちに止めた方がよさそうだな・・・」










部長である手塚が大声で指示を出すと部員全員でコートを片し
着替えを終えた者から散り散りに自分の家へ帰っていった。










「最悪・・・」










リョーマもまた、試合が出来なかった事への苛立ちを感じ
ときどき傘越しにドンヨリ重い空を睨みながら途中の公園を横切った。










「あれ・・・?」










横切る途中に発見したある人物・・・ を見つけた瞬間、リョーマは目を見開いた。
なぜなら は寒空の下、制服だけでコートもマフラーも何の防寒も身につけず
ベンチに座り込み、身体を丸めるように1人でポツンッと雨に打たれ続けていたのだから・・・。





リョーマは頭からぐっしょり濡れた に駆け寄って頭上に傘を差し出すと
がフッと顔を上げてリョーマを見た。










「何やってんの」

「・・・別に」

「びしょ濡れじゃん。風邪ひくから家に帰りな」










の目が悲しそうに伏せられるのを見て、リョーマは顔を覗き込んだ。










「・・・て、ない」
「えっ?」

「帰る家なんて・・・ない」

「・・・えっ」










消えそうなその言葉にリョーマは思わず言葉が出なかった。
家出か何かかとも考えたが、 の暗い瞳にジワッと溜まった涙を見た瞬間・・・
後先考えずにリョーマが出した答えは1つだった。





の腕をガッとつかむと、座っていたベンチから立ち上がらせた。










「じゃあ、うちに来なよ」















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

1度やってみたかった居候ネタ!
ついに始めちゃいました!!

新連載のスタートです・・・緊張します。
応援よろしくお願いします。

あ、あと季節と学年の問題なんですけど・・・。

気づいてます。でも・・・でも・・・!!

大目に見てやってください。(土下座)





2009.1.1